卓上遊戯創造館別館

ボードゲームの紹介等

出口のない海


半落ち」「クライマーズハイ」がベストセラーとなった横山秀夫氏の出口のない海を読んだ。同作品は太平洋戦争末期に人間魚雷「回天」の乗組員に志願した並木浩二を主人公にした物語である。


甲子園優勝投手である並木は、ヒジの故障のため大学野球では活躍の場を失っていた。唸る様なストレートを投げる事が出来なくなった並木は、もう一度マウンドに復活する事を夢見て、2段階に変化する魔球を完成させようと黙々と練習に打ち込んでいた。しかし、いよいよ戦局は悪化。並木たち大学野球部のメンバーも学徒出陣により戦争に駆りだされる。


海軍に入隊した並木は対潜学校で過酷な訓練に励んでいた。その時、「総員直ちに講堂へ集合!」の合図。佐藤司令が険しい表情で登壇した。並木はただならぬ気配を感じた。


 「一切口外無用! 本日、諸子を集合させたのは他でもない。日本は今、危急存亡の秋である。前線将兵の奮戦にもかかわらず、敵の反攻はますます熾烈を極め、戦況は悪化の一途を辿っておる。そして今、この窮境に応えて敵撃滅の特殊兵器が考案された。既に試作を終え、米海軍に一大反撃をする日も近い。この特殊兵器は、挺身肉薄一撃必殺を期するものであり、その性能上、特に危険を伴うものである。ゆえに、諸子のごとき元気溌剌、かつ攻撃的精神旺盛な者を必要としている。この特殊兵器に乗って戦闘に参加したければ、名前と二重マルを書け。どちらでもよい者はただのマルを、希望しないものは名前だけを書いて提出せよ。以上、終わり」


並木の心は揺れ動いた。額には脂汗が浮かぶ。しかし真っ白な頭で二重マルを書き込んだ・・・


 その特殊兵器は人間魚雷「回天」・・・。 自らが魚雷の目となり敵艦に突っ込む特攻兵器。回天に脱出装置はない。それは出撃すれば必ず死を意味するものであった。 出撃までの限られた時間の中で、精一杯生きる意味を模索する並木。


 命の重みとは何か、青春の悲しみとは何か、そして愛とは何か・・・。


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出口のない海 (講談社文庫)

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